うつを解消していくために―<いのちの働き>を感じるための三つのヒント
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)、運動と瞑想で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回は、うつを解消するために、<いのちの働き>を感じるための方法について書いてみたいと思います。
前回や前々回の記事などでは、<うつ>の症状や、うつ病という心の問題を少しでも解決するために、心理カウンセラーの諸富祥彦氏の『孤独であるためのレッスン』や、『〈むなしさ〉の心理学』、『人生に意味はあるか』などを取り上げてみました。
そして、人生のむなしさや苦しみを少しでも解消していくためのヒントとして、諸富祥彦氏が出会うことになった<いのちの働き>というものを紹介してみました。
以下、おさらいですが、諸富祥彦氏の著作のなかの、<いのちの働き>に関する記述を引用します。
私はこれまで気づかずにきたけれど、この何かはずっと前からそこに与えられていた。私を生かし、私をあらしめ、私を成り立たしめてきた。つまりこの何かこそ、私の真実の主体なのだ。そして今、この何かがそれ自体で立っている。だからその結果、私も立っていられるのだ。
この「何か」は「働きそのもの」である。あえて名前を付ければ<いのちの働き>とでも呼ぶよりほかない何かである。私の底の<いのちの働き>。(略)
つまり私は、<いのちの働き>に生かされている。
(諸富祥彦『〈むなしさ〉の心理学』p185~186)
私はそれまで、自分がどう生きるべきかと悩むのに忙しくて、それに気づかずにきたけれど、このはたらきは、実は、ずっと前からつねにすでに与えられており、私を生かし、私をあらしめ、私を成り立たしめてきていた、ということ。つまりこの「はたらき」こそ私の真実の主体であり、この「はたらき」がそれ自体ではたらいているからこそ、それによって、私も立っていられるのだということ。むしろ「私」は、このはたらきの一つの形にすぎない、ということ。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p198~199)
この「はたらき」は、天然自然。意味無意味を超えた「いのちのはたらき」です。その意味でそれは、超・意味です。またそれは、意味があるとかないとかいう観念的な意味づけに先立って、ずっと前からそこではたらいていたものです。その意味でそれは、前・意味であり、脱・意味であると言うこともできるでしょう。
この「はたらきそのもの」について語るとき、忘れてはならないのは、その「つねに、そしてすでに」という性質です。
(諸富祥彦『人生に意味はあるか』 p198)
なぜ、この<いのちの働き>には、生きることのむなしさや苦しみ、悩みなどを解消する力があるのでしょうか?
思うに、この<いのちの働き>は、自分自身を変化させてくれるきっかけを与えてくれたり、自分を変化させてくれるチカラが宿っていたりするからなのではないでしょうか?
<いのちの働き>を感じるとは?
ところで、この<いのちの働き>とは、肉眼では確認しづらく、簡単には言葉にできない「見えない何か」であり、科学を中心とした合理的な思考だけでは捉えきれない、生命そのものともいうべき<何か>なのだとも言えます。
そのため、ただ頭で考えているだけでは、なかなか気づくことが出来ない性質のものなのであり、何でも物事を論理的に考えたり、科学的なデータを重視したりする人にとっては腑に落ちず、もしかしたら、何かの宗教に勧誘されているみたいで、どこか胡散臭いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし以前の記事で書きましたが、うつの症状に悩まされていた私自身が、文学や哲学、宗教、精神医学に関する本を読み、考え、やがて、<私>という存在は、私自身の力のみによって生きているのではなく、<見えない何か>によって生かされているのだ、ということに気づくことで、自分自身の心の問題を解決していったという経緯があります。
また、私自身、どこかの教団に属し、特定の宗教を信仰をしているわけではありませんが、毎日の生活に、呼吸を深めることや、ヨガ、マインドフルネス瞑想などを取り入れることで、<いのち>や<からだ>を感じる時間を増やしてみることで、何でも頭の中で考えていた頃よりも、気持ちが楽になりましたし、体調も良くなったのです。
それは、<あたま>ではなく、<からだ>から生きるためのチカラをもらっているという感覚であり、生きていること自体が、気持ちよいと感じられることでもありました。
そのため、<いのちの働き>とは、生きている限り、誰にでも最初から共通して与えられているものなのだと私自身は感じますし、<いのちの働き>に目覚めることは、決して特定の宗教を信じたり、スピリチュアルな世界に傾倒したりすることと、直接結びつくわけではないと思うのです。
私自身がここでお伝えしたい<いのちの働き>に目覚めるとは、分かりやすくいうと、頭のなかでいろいろと考えすぎてしまう時間を減らし、代わりに自分以外の存在を<感じる>時間を増やすということなのです。
うつを解消していくためには、心の中に感じる部分をもつことも大切
<いのちの働き>を感じるためのレッスン
そういうわけで、ここではその<いのちの働き>を個人のレベルで少しずつ感じられるようにするレッスンを三つ紹介してみたいと思います。
その<いのちの働き>を感じるための三つのレッスンとは、
です。
1、自然に触れる
自然のなかには、生命力に満ちた自分以外の存在が、溢れているように思います。
山のなかを散策すれば、森のなかの樹々や草花、小鳥のさえずりなどに気づかされますし、海をしばらく眺めていれば、ひとつとして止まることのない波の動きに圧倒されたり、癒されたりします。
また、遠出しなくても、晴れた日は近くの公園で日光浴をするのもオススメです。わたしたちを生かしてくれている太陽の光をしばらく浴びていれば、そのぶん、エネルギーが充てんされ、元気をもらうこともできます。
もちろん、自然のなかで、呼吸を深めながら五感をフルに働かせ、マインドフルネス瞑想を行なったり、身体を動かしたりするのもお勧めです。
2、ゆっくりとした運動を行う
ゆっくりとした運動を行うことで、自分の<からだ>があること、すなわち生きている事、<いのちの働き>に気づきやすくなります。一方、普段から頭で考えてばかりだったり、俯いてスマートフォンなどを操作していたりすると、身体性を意識しにくくなり、からだも柔軟性を失って固くなってしまいます。
しかし<いのちの働き>を感じられるような、ゆっくりとした運動によって<からだ>が良い方向に変わることが出来れば、その分、心の状態も良い方向へ変化していくことは十分考えられます。
ゆっくりと動くことによって、これまで自分が感じることが少なかったカラダの部分を微細に感じられるようになれば、そのことが、<いのちの働き>を感じることにつながっていきます。
そのためのゆっくりとした運動としては、ヨガや太極拳などが挙げられますが、ストレッチやスロージョギングでも構いませんので、自分が始めやすい運動を見つけてみると良いと思います。
3、<食べること>を意識する
私たちは毎日食事を行っていますが、食べる事とは、生きるために、自分以外の存在から、<いのち>をいただいている行為に他なりません。
しかし毎日の食事が、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで買える加工食品ばかりになってしまうと、どういうわけか、<いのち>を頂いているという感覚が稀薄になっていきます。
また、加工食品の多くは、栄養素がきちんとバランスよく含まれていないため、食事の中心がカップラーメンなどの加工食ばかりになってしまうと、栄養不足によって心と身体の元気が失われる可能性もあります。
そのため、新鮮な野菜や果物など、精製されていない食べ物を、ゆっくりと咀嚼しながらなるべく舌で味わうようにする事も、日頃から<いのち>を感じるようにするトレーニングになります。
そのほか、私たちは、自分の力だけで生きているのではなく、腸に生息する腸内細菌など、無数の微生物たちによって生かされている(共生している)という事実も、忘れてはならないような気がします。したがって、腸内細菌のエサになる食物繊維を多く摂ることも大切になってくると考えられます。
以上、ここまで<いのちの働き>を感じるための三つのヒントを紹介してみました。
少しずつで出来る範囲で構いませんので、自分なりに<いのちの働き>に触れるために、
- 自然に触れる
- ゆっくりとした運動を行う(ヨガなど)
- <食べること>を意識する
というこれらの習慣を続けてみてください。
もしかしたら、心の悩みを解決するヒントが何か見つかるかもしれません。
うつを緩和するには、腸内環境の改善と糖質制限、食事・運動・瞑想が大切です。