うつの改善にゆっくりとした「運動」が必要な理由
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)、運動と瞑想で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回はうつの改善にゆっくりとした運動が必要不可欠な理由についてです。当ブログでは主に食事によってうつの症状を改善する方法について書いていますが、うつの症状を少しでもやわらげていくためには、食事だけではなく、「運動」や心のトレーニングとしての瞑想も必要になってきます。
特に運動には、脳を活性化したり、自律神経のバランスを整えたり、からだの炎症を抑えたりする働きがあるため、日頃の生活のなかで適度な運動を行う習慣を持つことは、うつの改善に大きな役割を果たしてくれると考えられます。
実際、適度な運動は身体と心に様々な良い効果を与えてくれることはよく知られています。しかし運動をほとんど行わない毎日を過ごしていると、考え事が多いなど頭ばかりを使い、さらに脳の同じ部位だけを酷使するようになり、心身のバランスは崩れていってしまいます。
ところがウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を無理しない程度に行うことは、脳の様々な部位を刺激し、認知機能を改善したり、新陳代謝を活性化したりすることにつながっていきます。
このあたりの運動の重要性について、精神科医の最上悠氏は以下のように述べています。
食生活と並び、うつの改善に大きな役割を果たすのが運動です。
第一に、運動は脳を効率よく活性化します。筋肉は脳からの指令によって動くわけですが、反対に筋肉も感覚器として脳を刺激する働きをしています。さらに、筋肉が動くと、血流やホルモンの分泌もよくなりますから、神経細胞の働きや新陳代謝も活発になるのです。
また、エクササイズによって肥満を解消していくと、慢性炎症を改善する効果も得られます。脂肪細胞が減ると、体内の炎症伝令物質が減ります。それによって、脳や体で炎症が起こりにくい体質になるのです。(最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』 p117)
運動は心と身体のバランスを整える
さらに運動にはからだの歪みを矯正し、全身や心と体のバランスを整えるというメリットもあります。また自律神経のバランスも整うため、免疫力の向上やストレスの解消にもつながっていきます。
ちなみに私自身も毎日屋内でパソコンばかりをやって頭だけを使っていると、次第に心身のバランスが崩れて、元気がなくなってしまうのですが、そうなる前にあえて運動をするようにして、心と身体の調子を整えています。
とはいっても、うつの状態にあるときは、エネルギー不足も関係しているため、運動をしようという気がなかなか起きないものです。
うつの改善のためには有酸素運動をマイペースで行うことが大切
そのため、無理に激しい運動や長時間の運動を行う必要は無く、ウォーキングやジョギング、自転車をこぐなどの有酸素運動を1日に20~30分程度、ゆっくりと自分のペースで行うだけで十分です。
また、運動は行えば行うほど、気力が湧いてくるという性質がありますので、最初は運動を始める気力がなくても、一度スタートしてしまうと、不思議なことにだんだんやる気が起きてきます。
したがって、運動はまず始めてみることが大切になってきます。
そして、うつを改善するための生活習慣として、自分が気に入った運動をずっと続けていくことも重要です。
しかしうつの症状をやわらげるためには積極的に運動を行うことが大切だといっても、やはり無理をしすぎるのはよくありませんし、張り切り過ぎて燃え尽きてしまうのも避けるべきです。
どのくらいの時間運動を行うのかは、やはり自分の体調と相談する必要があります(もちろん、この記事の内容はからだを起こすのもつらい方に、無理に運動を勧めているわけではありません。運動を行うのはある程度の気力がある時で良いのです)。
ちなみに、無理せず自分のペースで行える運動としては「スロージョギング」があります。このスロージョギングはうつをやわらげるための有酸素運動としてオススメです。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
ヨガや気功などゆっくりとした運動もオススメ
もし、からだを動かすのがどうしても億劫な場合は、ヨガや気功、太極拳など、家の中ででも出来る、ゆっくりとした運動を行うのが効果的です。
その場合、ヨガや気功、太極拳のマスターに最初からなろうとする必要はなく、本や動画などで紹介されている動きをまねてみるだけで十分です。
また、慢性的な運動不足や、長時間のデスクワークは、ストレスを溜め込むだけではなく、腸内環境を悪化させたり、便秘の原因になったりするので、注意が必要です。
反対に適度な運動やゆっくりとした運動は腸内フローラや腸の健康を維持するために有効です。
ここまで、うつの改善に運動が必要不可欠な理由について述べてきましたが、以下は、運動のうつを改善する効果について書かれた文章の引用です。よろしければ参考になさってください。
うつ病には運動療法が効果があるという報告があります。どのような仕組みでうつ病が改善されるかはまだはっきりとはわかっていませんが、うつ病と診断された患者に運動療法を行うことで抗うつ薬の投与量を減らすことができたという報告もあります。
また、運動によって、脳由来神経栄養因子(BDNF)が抗うつ剤を投与するよりも増加したという報告もあり、精神科の医師の中には患者と一緒に走ることでうつ病を治療する、いわば「ジョギングセラピー」を実践している人もいます。(久保田競 田中宏暁『仕事に効く、脳を鍛える、スロージョギング』 角川グループパブリッシング p118)
運動が脳の健康にいいと言われるのは、単に運動が脳への血流を促進して、細胞の成長と維持のための栄養を届けてくれることだけではない。最新の科学によると、こんな五つのメリットがある。
- 炎症を抑える
- インスリン感受性を高める
- 血糖コントロールを改善する
- 記憶中枢を大きくする
- BDNFの量を増やす (デイヴィッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p273)
一日中知的労働をして大脳だけを酷使しながら生活している現代人のライフスタイルというのは、人間の生き方として歪んでいるように思うのです。その果てに脳が疲れ果て、うつ病になってしまうライフスタイルは、本来の人間のあるべき生活とかけ離れて、脳が休息を要求しているように思えてなりません。
否、脳は休息よりも身体からの適度な刺激を渇望しているようにも思えてきます。ですから、うつ病の予防のためにも治療のためにも、身体を使ったアプローチが最も理にかなっているように思うのです。その身体とは、「小さな脳」である腸、皮膚、筋肉に「弱い」「ゆっくりとした」刺激を与えることだと思うのです。(山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』p207)
うつの症状をやわらげていくためには、食事・運動・瞑想の三つが大切です。