食物繊維がうつの症状をやわらげていくために大切な理由
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回は食物繊維がうつの症状をやわらげていくために大切な理由についてです。
なぜ食物繊維がうつの症状を緩和するために重要な役割を果たすのかといえば、その理由は、食物繊維は腸内環境と、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善していくために必要不可欠だからです。
食物繊維は腸内細菌のエサになり、腸内細菌の数を増やす働きがありますし、また、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し、便秘を解消する働きもあります。
また食物繊維には水溶性と不溶性の2種類が存在します。
水溶性の食物繊維は腸内細菌のエサになりやすい性質があります。一方、不溶性の食物繊維は腸内環境をキレイに掃除したり、便通を促したりする性質があります。
食物繊維の主な効果
- 腸内細菌のエサになる
- 腸内環境をきれいにする
- 便秘を解消する
つまり、食物繊維といっても2種類があり、腸内環境や腸内フローラを改善していくためには、このふたつをバランスよく摂っていくことが必要になってきます。
(より詳しい食物繊維の情報については以下のページをご覧ください)。
そして、腸と脳は神経系でつながっているため、腸内環境が良くなればなるほど、脳や気持ちにも良い影響を与えることは十分考えられます。
ちなみに前々回の記事では、『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』に書かれている、腸と脳のつながりである「腸脳相関」と「うつ」の関係についてのくだりをご紹介しましたが、この『腸科学』では、食物繊維の重要性についても再三述べられています。
「食物繊維」という言葉は不明確なので、ヒトが体内に取りこむ食物成分のうちマイクロバイオータの食べ物になるものを、私たち二人は「マイクロバイオータが食べる炭水化物」を意味するmicrobiota accessible carbohydrates(MAC)と呼ぶ。すでに述べたように、マックは果物や野菜、豆類、穀物などさまざまな食物にふくまれ、マイクロバイオータによって発酵される炭水化物のことである。食物や食物繊維サプリメントにふくまれる食物繊維には、マイクロバイオータのいる大腸まで到達せず発酵しないものもある。これらの発酵しない繊維質も便秘の改善にはとても効果があり、排泄物が水分を吸って嵩が増すので、良好な整腸作用が得られる。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157)
『腸科学』の著者であるソネンバーグ夫妻は、腸内マイクロバイオータ(腸内の微生物の集まり)が食べる食物繊維を含めた炭水化物のことを「マック」と呼んでいますが、本書のなかでは、この「マック」をたくさん食べるようにすることが、腸内マイクロバイオータの健康維持に役立つとしています。
「短鎖脂肪酸」を生み出すために必要な食物繊維
さらに食物繊維は腸内細菌が「短鎖脂肪酸」を生み出すのにも貢献します。
この短鎖脂肪酸とは、主に水溶性食物繊維を摂取すると、腸内細菌が「発酵」と呼ばれる現象を起こすことで作り出される飽和脂肪酸の一種のことです。
だがマイクロバイオータに食べ物を与えて短鎖脂肪酸をつくってもらうには、やはりマックを食べる必要がある。マックをたくさん食べれば食べるほど、腸内の発酵が盛んになり、より多くの短鎖脂肪酸がつくられる。マイクロバイオータにどのマックを与えるかによって、腸内で繁殖する微生物群、マイクロバイオータを構成する細菌種の数(細菌集団の多様性)、この細菌集団が果たす機能が変わってくる。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157)
そして、この短鎖脂肪酸の生成は、「うつ」とも関係してくるようです。
このことに関して、医学博士の内藤裕二氏は以下のように述べています。
食物繊維は、腸内細菌の中でも有用菌といわれるフローラに利用され、短鎖脂肪酸が生成されることが注目されています。
脂肪酸とは、油脂を構成する成分の一つで、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしていますが、そのうち炭素の数が六個以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれ、たくさんの種類があります。その中では、酪酸、酢酸、プロピオン酸が特に重要と考えられていますが、実は、それぞれの短鎖脂肪酸が腸管内でどのような役割を果たしているかについては、よくわかっていません。
この短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸において食物繊維をエサとして腸内細菌が発酵することによって作り出されます。つまり、これまでヒトの健康増進に良いと考えられてきた水溶性食物繊維の機能の一部は、短鎖脂肪酸に関与していることが明らかになってきたわけです。(内藤裕二『消化管は泣いています』p190)
有用菌によって産生される短鎖脂肪酸の中でも、特に酪酸には、抗うつ作用や認知機能改善作用があるようで、盛んに研究されているようです。こういった基礎研究は、消化管環境を改善し、有用菌を増加させるライフスタイルが、ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すものであり、大変興味深い点です。(内藤裕二『消化管は泣いています』p179)
内藤裕二氏が『消化管は泣いています』のなかでこのように述べている点は、食物繊維をたくさん摂り、腸内細菌のバランスを整えることで、うつ病を予防したり、うつの症状をやわらげていくために、非常に興味深いと感じられます。
しかし、あくまで「ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すもの」であるので、「短鎖脂肪酸」がうつを治すための効果を発揮すると科学的に証明されたわけではありません。
ですが、普段の生活において、腸内フローラのバランスが整うような食物繊維がたっぷりの食事を摂るようにすることは、うつの症状を少しでもやわらげるためには有効であると思われます。
そのため、食物繊維が豊富な野菜や海藻類、雑穀類などを毎日の食事でたくさん摂るようにすることが望ましいですが、それが難しい方は、食物繊維のサプリメントを飲みものやみそ汁などに混ぜて摂るようにするのもオススメです。
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また、当ブログではうつの緩和のために、なるべく砂糖を減らす糖質制限も推奨していますが、糖質制限で気をつけなければならないのは、食物繊維は炭水化物の一種だということです。
糖質制限とはやみくもに炭水化物を減らすことではないため、糖質制限を行う際は、砂糖を減らすと同時に、食物繊維を増やすのが理想的なのだと考えられるのです。