うつを腸内フローラ改善と糖質制限で治すための方法ブログ

うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ改善と糖質制限、DHA)、運動と瞑想で治すための方法ブログです。

トランス脂肪酸がからだと心の健康に対して悪い理由

当ブログではうつ病予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。

 

前回はうつの予防のための正しい油の摂り方について書きましたが、今回はトランス脂肪酸が心の健康に悪い理由について述べていこうと思います。

一般的にトランス脂肪酸が体に悪いと言われていますが、その「トランス脂肪酸」とは水素結合が足りない不飽和脂肪酸に対して、人工的に水素添加することで出来たいびつな飽和脂肪酸のことです。

このトランス脂肪酸が問題なのは、人工的に水素添加することで出来上がっているため、プラスチックのように体内で分解されず、いつまでも体内に残ってしまうことだとされています。

そのため細胞の新陳代謝に悪い影響を及ぼしてしまうのです。

実際、脂肪を研究している科学者は、油に水素添加することを「プラスチック化する」と述べているようです。

例えば脳科学専門医の山嶋哲盛氏は、トランス脂肪酸が体に悪い理由に関して「細胞の働きが阻害されると、血管や脳に障害を起こしたり、さまざまな疾病の原因となります。トランス脂肪酸による代表的な健康被害が、血液中の悪玉コレステロールの増加や動脈硬化です」と述べています(山嶋哲盛『サラダ油をやめれば認知症にならない』)。

 

このトランス脂肪酸が体に悪い詳しい理由については以下の記事をご参照ください。

omegaoil.seesaa.net

また、トランス脂肪酸の心の領域に対する悪影響に関しては、イギリス・オックスフォード大学のピュリ医師らによって、トランス脂肪酸が脳の活動に必要な酵素を破壊して、注意欠陥障害(ADD)や注意欠陥多動性障害ADHD)を引き起こす要因になることが指摘されているといいます。

 

このようにトランス脂肪酸は人のからだやこころに対して様々な悪影響を与えるとされており、なるべく摂らないようにするのが望ましいわけですが、日本では現在のところ、使用量の制限や表示の義務付けといった厳しい規制は食品業界に課されていません。

そのため、「マーガリン」や「ショートニング」といった原材料を使用している加工食品の多くにトランス脂肪酸が含まれているのが現状です。

もちろん、だからといって、スーパーマーケットやコンビニエンスストアに加工食品がありふれている現代社会において、トランス脂肪酸をまったく摂らないようにするのは非常に難しいと感じます。

しかし、末永くからだとこころの健康を維持していくためには、トランス脂肪酸の摂取を日頃から神経質にならない程度に気をつけてみることも、大切になってくると思われます。

 

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うつの予防のために正しい油の摂り方とオメガ3(DHA・EPA・α‐リノレン酸)脂肪酸が大切な理由

当ブログではうつ病予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。

 

今回はうつの予防のために、正しい油の摂り方とオメガ3(DHAEPA・α‐リノレン酸脂肪酸が大切な理由について書いていきたいと思います。

ではなぜうつの予防のために油(脂質)の摂り方が重要になってくるのでしょうか?

また心と体の健康のためにオメガ3(DHAEPA・α‐リノレン酸脂肪酸が必要になってくるのでしょうか?

近年、油(脂質・脂肪)は摂ると太りやすくなるというイメージのために、何かと敬遠されがちですが、正しい油の摂り方を知れば、肥満などの生活習慣病を予防すると同時に、からだとこころの健康を助けてくれます。

たとえば、脳の約6割は脂肪で出来ており、さらにその4割はDHAによって形成されていると言われているため、油の摂り方を知ることは、脳の神経細胞の健康を維持することにもつながっていきます。

それに加えて、脂質は脳の細胞膜の形成にも非常に大切な役割を果たしているため、正しく脂質を摂ることは、脳機能の改善にもつながってきます。

特にオメガ3(DHAEPA・α‐リノレン酸脂肪酸のうちのDHAは脳機能を考えるうえで大変重要になってきますので、うつの症状を少しでもやわらげるためには、きちんと摂るようにしなければなりません。

また、脂質は糖質の代わりの貯蔵率の良いエネルギー源になったり、脂溶性ビタミンの吸収を助けたりしています。

それ以外にも、リン脂質、糖脂質、コレステロールは生体膜の成分となって、細胞の働きを維持するという重要な役割を果たしています。

脂肪酸の種類

名称 脂肪酸の種類 含まれる主な食品
飽和脂肪酸 酪酸、ミリスチン酸、アラキジン酸など バター、ココナッツオイル

多価不飽和脂肪酸

オメガ3

α‐リノレン酸、DHA、EPA 亜麻仁油、えごま油、シソ油、魚油など

多価不飽和脂肪酸

オメガ6

リノール酸、アラキドン酸 サラダ油、紅花油、ごま油、コーン油、肝油など

一価不飽和脂肪酸

オメガ9

オレイン酸、パリミトレイン酸 オリーブオイル、椿油など

 

うつの予防のために正しい油の摂り方とは?

ではうつの症状を少しでもやわらげ、改善の方向へ向かわせるためには、日頃の食生活でどのような油を多く摂る必要があるのでしょうか? 

ひとくちに脂肪酸といっても様々な種類がありますが、まず大切なのは体に必要な必須脂肪酸を摂ることです。なぜなら必須脂肪酸は体内で十分に合成することができないため、食事から補って行かなければならないのです。

その「必須脂肪酸」には「オメガ3」と「オメガ6」の2種類があります。

「オメガ3脂肪酸」とは、先程も述べましたが、DHAEPA・α‐リノレン酸のことです。

また、「オメガ6脂肪酸」は主にリノール酸のことを指します。

このふたつは血液に対して相反する働きがあり、「オメガ3」は血液をサラサラに、「オメガ6」は血液を固まらせる方向へ向かわせる性質があります。

 

では、必須脂肪酸である「オメガ3」と「オメガ6」をただ漫然と摂っていけば良いのかといえば、必ずしもそうであるとは言い切れないのです。

なぜなら、現代社会においてはオメガ6のリノール酸を、自宅で使っているサラダ油や、ファーストフード、加工食品、お菓子などから大量に摂り過ぎている可能性があるからです。

またそれら以外にも、リノール酸はマヨネーズやドレッシングなどにも多く含まれているため、知らないうちに十分な量が体内に入ってきています。

オメガ6の脂肪酸にも細胞膜やホルモンをつくる働きがあることは確かですが、過剰摂取はアトピー性皮膚炎などアレルギー症状を引き起こしたりするとされています。

ちなみに脳の専門医の山嶋哲盛氏はリノール酸が含まれているサラダ油の摂り過ぎは、認知症発症のリスクを高めるとしており、脳の健康のためには、リノール酸の過剰摂取は好ましくないと考えられます。(参考 山嶋哲盛『サラダ油をやめれば認知症にならない』

うつの予防のために重要なのはオメガ3脂肪酸を多く摂ること

一方、(先程も少し触れましたが)オメガ6の働きに対して、相反する働きをするのが「オメガ3」なのです。

そのため、現代社会における体と心の健康のための油の摂り方とは、オメガ6(主にリノール酸)を減らし、替わりにオメガ3脂肪酸を多く摂る、ということになります。

ちなみにオメガ3脂肪酸うつ病の改善に効果を発揮するという研究データを紹介している研究者もいます。(参考 奥山治美『オリーブオイル・サラダ油は今すぐやめなさい!』

また、オメガ3脂肪酸のうちのDHAは、脳の細胞膜(リン脂質)の形成にも深く関与しているため、判断力や記憶力など、脳の認知機能の改善にも効果を発揮すると言われています。(参考 生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』

 

つまり、うつを予防したり、心の健康を保ったりするためには、過剰摂取になりがちなオメガ6(リノール酸)に対し、バランスを取るようにして、オメガ3の必須脂肪酸も多くしていくことが大切なのです。

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ちなみにオメガ3とオメガ6とのバランスについては、「1:2」や「1:1」が望ましいとされています。

オメガ3脂肪酸はイワシやサバなどの青魚に多く含まれていますが、なかなか普段の食事で青魚を食べることができないという方は、青魚の知的栄養素【DHA&EPA+サチャインチ】 などのサプリメントを利用することも手段のひとつです。

また、亜麻仁油やえごま油に含まれているα‐リノレン酸は、体内で1~2割がDHAEPAに変換されます。

そのため、食卓に亜麻仁油やえごま油を並べ、オメガ3脂肪酸は一般的に熱に弱いとされているため、炒め物や揚げ物に使わず、サッとサラダや惣菜などにかけることは、オメガ3脂肪酸の慢性的な不足を解消するのをサポートしてくれます。

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以上、うつの予防のために正しい油の摂り方とオメガ3(DHAEPA・α‐リノレン酸脂肪酸が大切な理由について述べてきましたが、もしオメガ3脂肪酸を日頃の食生活であまり摂っていないと感じたら、サラダ油などに含まれるオメガ6脂肪酸とバランスを取るようにして、少し多めにオメガ3脂肪酸を摂るようにしてみてください。

 

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そのほか、心の健康維持のためには、トランス脂肪酸の摂り過ぎも要注意です。

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「自分」とは何かを腸内細菌から考える。

 

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今回は「自分」とは何かを腸内細菌から考えてみたいと思います。

この「自分とは何か」という問題は、「心」とは何かという問題同様、非常に難しいのですが、実は私自身が、若い頃は気持ちがふさぎ込むことが多く、その過程において、「自分」や「私」とは何かという問いを自分の心のなかで発し続けてきました。

そして、哲学や宗教、心理学や精神医学などのたくさんの書物や人生経験のなかで分かってきたことのひとつは、「自分とは自分だけではなく、自分以外の集まりのことも含む」ということです。

このことについての説明を始めると、かなり長くなってしまううえ、難しい話になってしまうので、ここでは止めておきますが、代わりに藤田紘一郎氏の『腸内細菌が家出する日』に、まるで代弁してくれているような的確な文章が書かれていますので、引用したいと思います。

 

 自分、自己、自我、アイデンティティ、パーソナリティ。これらは心身医療や心理学でよく使われている言葉ですが、「本当の自分」というものは、実際何をもって証明できるのでしょうか。

 といっても、私は禅問答や哲学論を投げかけているわけではありません。きっとこの答えを求めようとすれば、論じる人の数だけ答えがあるくらい、果てしない解となることでしょう。

 しかし逆に、「本当の自分というものはないのだ」という仏教の教えのような解は、生物科学から証明できるようになってきたのではないか、と私は思っています。

 というのも、私が長く研究してきた「寄生虫」と「腸内細菌」のふるまいや、それらが私たちに及ぼす影響を観察することで、そのことを強く実感するようになってきたのです。

 結論を言ってしまえば、「生きとし生けるものはすべて、別の生き物から多大な影響を受け、自己がつくられている」ということになります。(藤田紘一郎『腸内細菌が家出する日』p1~2

 

腸内細菌が家出する日

私たちは腸内細菌によって生かされている

日頃の生活のなかで腸内細菌の存在は見えないため、腸内細菌が私たちの「こころ」に影響を与えているということは、なかなか信じられないかもしれませんし、また、普段、「私」というものを疑ってみたことがない方ほど、私たちは腸内細菌によって生かされているという視点はすぐに納得できないかもしれません。

もちろん、私はこの記事で<私>とは腸内細菌に操られている存在だ、という極端なことを言いたいわけではありません。

ただ、藤田紘一郎氏が「生きとし生けるものはすべて、別の生き物から多大な影響を受け、自己がつくられている」と述べているように、自分の存在が、腸内細菌をはじめとした様々な存在に支えられているという視点をもってみることで、世界の見方が変わり、わたしたちが住む世界の姿が少し変わるかもしれないと思ったのです。

そして、そのことと、あまり無理をせず心が少しでもラクになることが、どこかでつながれば良いのではないかと感じます。

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ちなみに『腸内細菌が家出する日』の前半部では、トキソプラズマをはじめとして、サナダムシやフクロムシ、エメラルドゴキブリバチといった寄生生物が宿主である生物の行動をコントロールしているという内容が語られています。

興味がある方は『腸内細菌が家出する日』をぜひ読んでみてください。

 

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食物繊維がうつの症状をやわらげていくために大切な理由

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今回は食物繊維うつの症状をやわらげていくために大切な理由についてです。

なぜ食物繊維がうつの症状を緩和するために重要な役割を果たすのかといえば、その理由は、食物繊維は腸内環境と、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善していくために必要不可欠だからです。

 

食物繊維は腸内細菌のエサになり、腸内細菌の数を増やす働きがありますし、また、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し、便秘を解消する働きもあります。

また食物繊維には水溶性と不溶性の2種類が存在します。

水溶性の食物繊維は腸内細菌のエサになりやすい性質があります。一方、不溶性の食物繊維は腸内環境をキレイに掃除したり、便通を促したりする性質があります。

 

食物繊維の主な効果

  • 腸内細菌のエサになる
  • 腸内環境をきれいにする
  • 便秘を解消する

 

つまり、食物繊維といっても2種類があり、腸内環境や腸内フローラを改善していくためには、このふたつをバランスよく摂っていくことが必要になってきます。

(より詳しい食物繊維の情報については以下のページをご覧ください)。

www.tyounaiflorakaizen.com

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そして、腸と脳は神経系でつながっているため、腸内環境が良くなればなるほど、脳や気持ちにも良い影響を与えることは十分考えられます。

ちなみに前々回の記事では、『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』に書かれている、腸と脳のつながりである「腸脳相関」と「うつ」の関係についてのくだりをご紹介しましたが、この『腸科学』では、食物繊維の重要性についても再三述べられています。

 

 「食物繊維」という言葉は不明確なので、ヒトが体内に取りこむ食物成分のうちマイクロバイオータの食べ物になるものを、私たち二人は「マイクロバイオータが食べる炭水化物」を意味するmicrobiota accessible carbohydrates(MAC)と呼ぶ。すでに述べたように、マックは果物や野菜、豆類、穀物などさまざまな食物にふくまれ、マイクロバイオータによって発酵される炭水化物のことである。食物や食物繊維サプリメントにふくまれる食物繊維には、マイクロバイオータのいる大腸まで到達せず発酵しないものもある。これらの発酵しない繊維質も便秘の改善にはとても効果があり、排泄物が水分を吸って嵩が増すので、良好な整腸作用が得られる。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157

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『腸科学』の著者であるソネンバーグ夫妻は、腸内マイクロバイオータ(腸内の微生物の集まり)が食べる食物繊維を含めた炭水化物のことを「マック」と呼んでいますが、本書のなかでは、この「マック」をたくさん食べるようにすることが、腸内マイクロバイオータの健康維持に役立つとしています。

「短鎖脂肪酸」を生み出すために必要な食物繊維

さらに食物繊維は腸内細菌が「短鎖脂肪酸」を生み出すのにも貢献します。

この短鎖脂肪酸とは、主に水溶性食物繊維を摂取すると、腸内細菌が「発酵」と呼ばれる現象を起こすことで作り出される飽和脂肪酸の一種のことです。

 

 だがマイクロバイオータに食べ物を与えて短鎖脂肪酸をつくってもらうには、やはりマックを食べる必要がある。マックをたくさん食べれば食べるほど、腸内の発酵が盛んになり、より多くの短鎖脂肪酸がつくられる。マイクロバイオータにどのマックを与えるかによって、腸内で繁殖する微生物群、マイクロバイオータを構成する細菌種の数(細菌集団の多様性)、この細菌集団が果たす機能が変わってくる。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157)

 

そして、この短鎖脂肪酸の生成は、「うつ」とも関係してくるようです。

このことに関して、医学博士の内藤裕二氏は以下のように述べています。

 

 食物繊維は、腸内細菌の中でも有用菌といわれるフローラに利用され、短鎖脂肪酸が生成されることが注目されています。

 脂肪酸とは、油脂を構成する成分の一つで、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしていますが、そのうち炭素の数が六個以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれ、たくさんの種類があります。その中では、酪酸、酢酸、プロピオン酸が特に重要と考えられていますが、実は、それぞれの短鎖脂肪酸が腸管内でどのような役割を果たしているかについては、よくわかっていません。

 この短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸において食物繊維をエサとして腸内細菌が発酵することによって作り出されます。つまり、これまでヒトの健康増進に良いと考えられてきた水溶性食物繊維の機能の一部は、短鎖脂肪酸に関与していることが明らかになってきたわけです。(内藤裕二『消化管は泣いています』p190)

 

 有用菌によって産生される短鎖脂肪酸の中でも、特に酪酸には、抗うつ作用や認知機能改善作用があるようで、盛んに研究されているようです。こういった基礎研究は、消化管環境を改善し、有用菌を増加させるライフスタイルが、ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すものであり、大変興味深い点です。(内藤裕二『消化管は泣いています』p179)

 

内藤裕二氏が『消化管は泣いています』のなかでこのように述べている点は、食物繊維をたくさん摂り、腸内細菌のバランスを整えることで、うつ病を予防したり、うつの症状をやわらげていくために、非常に興味深いと感じられます。

しかし、あくまで「ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すもの」であるので、「短鎖脂肪酸」がうつを治すための効果を発揮すると科学的に証明されたわけではありません。

ですが、普段の生活において、腸内フローラのバランスが整うような食物繊維がたっぷりの食事を摂るようにすることは、うつの症状を少しでもやわらげるためには有効であると思われます。

そのため、食物繊維が豊富な野菜や海藻類、雑穀類などを毎日の食事でたくさん摂るようにすることが望ましいですが、それが難しい方は、食物繊維サプリメントを飲みものやみそ汁などに混ぜて摂るようにするのもオススメです。

 

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また、当ブログではうつの緩和のために、なるべく砂糖を減らす糖質制限も推奨していますが、糖質制限で気をつけなければならないのは、食物繊維は炭水化物の一種だということです。

糖質制限とはやみくもに炭水化物を減らすことではないため、糖質制限を行う際は、砂糖を減らすと同時に、食物繊維を増やすのが理想的なのだと考えられるのです。

 

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砂糖をやめる糖質制限がうつの症状緩和と改善のために大切な理由

当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。

 

今回は糖質制限がうつの症状緩和やうつ病予防のために大切な理由について述べていきたいと思います。

糖質制限はうつの症状緩和と改善のために効果的だと考えられますが、しかしこの記事でいう「糖質制限」とは、ダイエットのために極端にごはんやパンなどに含まれる炭水化物を減らすことではありません。

まずうつの症状をやわらげるための糖質制限として重要になってくるのは、「砂糖」や果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)など急激に血糖値を上げる糖質を減らすことです。

 

もちろん、「うつ」になる理由を全て「砂糖」などの糖質のせいにするわけではありませんが、なぜ「うつ」の症状の改善を考える時、特に「砂糖」が問題になってくるのでしょうか?

その答えは、砂糖はインスリンの過剰な分泌によって血糖値を乱高下させ(インスリン・スパイク)、不安定にさせるからです。

このことに関しては、薬学博士の生田哲氏の著作で詳しく述べられていますので、引用してみます。

 

 血糖値をうまくコントロールできない状況、言い換えれば、血糖値の上がり下がりが激しい状況を血糖代謝異常(低血糖症)と呼んでいる。血糖代謝異常のおもな症状は、朝起きられない、強い疲労感、気分の落ち込み(うつ症状)、気分のコントロールがきかない、集中力の欠如、物忘れがひどい、イライラ、突然の怒り(キレる)、めまい、ふらつき、悪夢、夢遊病、眠っている間に話す、不安、恐れ、震えなどである。(生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』p120

 

 砂糖や砂糖のように高度に精製されたカーボは、脳内の伝達物質に働きかけるばかりでなく、血糖に大きな影響をおよぼします。甘いものを食べると伝達物質レベ ルと血糖がいっしょに上がり、一時的な陶酔感や快感が得られますが、つぎに、両方とも下がります。こうして気分が落ち込み、元気がなくなります。これがうつです。(生田哲『砂糖をやめればうつにならない』p103

 

砂糖をやめればうつにならない

うつを引き起こすのは実は「低血糖」?

また生田哲氏は『砂糖をやめればうつにならない』のなかで、「低血糖は、マイナス感情、短期、不安、恐れ、うつを引き起こします」と述べています。

実はこの低血糖「うつ」を引き起こす一つの原因であるという見解については、栄養療法の専門家である溝口徹氏も、『「うつ」は食べ物が原因だった!』のなかで似たようなことを述べているのは、興味深い点です。

 

 ただし、低血糖症というのは、血糖値が低くなることだけが問題になるのではない。上がったり下がったりを繰り返したり、低い値で推移していくという状態もある。インスリンの分泌が正常なかたちから著しく逸脱する人もいるなど、人によってあらわれ方はさまざまだが、一日を通して、安定した血糖値を維持することが困難になることによって、身体や心に起こってくるさまざまな症状が、問題になる病気なのである。(溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』p111~112

 

 血糖値の安定が維持できないと、当然、脳に送られるブドウ糖も安定しない。脳にとっては一大事だ。そこで、血糖値が上がればインスリンが放出されるように、血糖値が下がりすぎれば、それに対応してさまざまなホルモンが動く。血糖値が下げるホルモンはインスリン一種類しかないが、上げるホルモンは多数存在していて、それらがさかんに働き出すわけだ。(溝口徹「うつ」は食べ物が原因だった!』p112

 

 どういったホルモンが優位に出てくるかで、あらわれる症状は違うが、集中力がなくなったり、イライラや不安感が増したり、人によっては眠気をもよおしたり、手のしびれや動悸、頭痛を感じたり、筋肉がこわばったり……など、まさにうつと診断される症状が起こってくるのである。これが低血糖症である。(溝口徹「うつ」は食べ物が原因だった!』p112~113

 

「うつ」は食べ物が原因だった!

 

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このように、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖などの血糖値を急激にあげる糖質が、なぜいけないのかといえば、先程も述べたように、インスリン・スパイクと呼ばれる現象によって血糖値が乱高下することにより、精神的に不安定な状態をひき起こすからなのです。

そのため、うつの症状を少しでもやわらげるために大切になってくるのは、血糖値を安定させるような糖質の摂り方だと考えられます。

 

特にコンビニエンスストアやスーパーマーケットで売られているお菓子やアイスクリーム、清涼飲料水といった加工食品の多くには、たくさんの砂糖や異性化糖が使われているため、美味しいからといって、普段から食べ過ぎてしまっている方は注意が必要です。

それに加え、砂糖や果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)などの糖質を摂り過ぎることは、脳に炎症を引き起こしてダメージを与えるとも言われています。そしてこの糖質の摂り過ぎやタンパク質の一種であるグルテンによって引き起こされた炎症が、うつ病の原因のひとつだと指摘する専門家もいます。

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もちろん、ストレスが溜まっていたり、気分が落ち込んでいたりする時ほど、甘い物を無性に口にしたくなる気持ちは分かります。つらいときほど砂糖がたくさん含まれた甘い物に頼りたくなるのは仕方のないことかもしれません(私自身も、若い頃は、うつの状態になりやすく、それと同時に砂糖がたっぷり入ったミルクティーやチョコレート菓子、スイーツなど、甘いものが大好きでした)。

 

しかし無性に甘いものを食べたくなる時は、血糖値を急激に上げる白砂糖ではなく、ゆるやかに血糖値を上げる甘味料を摂るように工夫することが出来ます。

たとえば、オリゴ糖やココナッツシュガー、アガベシロップなどは、血糖値をゆるやかに上げる甘味料(低GI値)です。

 

またエリスリトールやステビアといった人工甘味料は、血糖値の上昇を防ぎ、カロリーも低いうえ、天然由来であるため安全性が高いとされています。

なかには人工甘味料の危険性を指摘する人もいますが、これらの人工甘味料を砂糖代わりに利用することも、糖質制限を続けていくためには有効かもしれません。

 

おすすめはオリゴ糖

特に砂糖代わりに使う甘味料としておすすめなのはオリゴ糖です。

アガベシロップと比べると甘みが足りず、砂糖代わりの甘味料として使うには少し物足りないところもありますが、難消化性の糖質であるオリゴ糖は一般的に腸内細菌のエサになり、ヒトの腸に生息する善玉菌である「ビフィズス菌」を増やすとされているのです。

 

実際、フラクトオリゴ糖を摂取すると、摂取前に比べてビフィズス菌の数が約10倍になり、また、検出率も87%から100%に増加することが確認できたという、東京大学名誉教授の光岡知足氏の研究報告があります(参考 光岡知足『腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ』)。

しかもオリゴ糖は血液に入りこむ前に腸内細菌のエサになるので血糖値をほとんど上げないという性質があります。

一方、砂糖の摂り過ぎは、血糖値を急激に上げるだけではなく、悪玉菌が増殖する原因になりますので、注意が必要です。

 

当ブログはうつの症状を少しでもやわらげるために、糖質制限だけではなく腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善することを提唱していますが、腸内細菌のバランスを整えて、腸内フローラを良くしていくのにオリゴ糖の摂取は効果的だとされているのです。

 

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そもそも「糖質」とは?

ところでそもそも「糖質」とは何でしょうか?

このことについては、糖質制限ブームの火付け役となった夏井睦氏の『炭水化物が人類を滅ぼす』のなかで的確に説明されていますので、そこから引用します。

 

 簡単にいえば、糖質とは、「血糖値を上げる栄養素(食品)である。摂取した後、すみやかに血糖に変わるのが糖質である。問題の本質は、血糖を上げるか上げないかだけなのだ。

 血糖が増えると人体に害があるため、体はそれを筋肉細胞などに取りこむことによって減らすことになるのだが、糖尿病の人の場合には血糖を減らす機能のスイッチとなるインスリンがうまく働かないため、高血糖状態が続き、目の網膜や腎臓に障害が起こることになる。

 だから、血糖を上げない食事ならいくら食べてもいいが、食後に血糖を急速に上昇させる食品は、少量食べただけでも問題を生じるわけだ。そして高血糖は、糖尿病だけでなく、さまざまな健康被害の原因となる。

 血糖をもっとも効率的に上げるものが、ブドウ糖グルコース)だ。だから、糖質制限においてはブドウ糖そのものが含まれる食品はなるべく避けるべきだし、体内でグルコースに変わるデンプンも控える必要がある。(夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』p36~37

 

炭水化物の一部は腸内細菌のエサになる

しかし糖質制限で注意しなければならないのは、先程述べた「オリゴ糖」は糖質ですが腸内細菌のエサになりますし、腸内環境を改善するために非常に大切な食物繊維は炭水化物に分類されますので、無理な糖質制限を課すことで、腸内細菌にも全く食べ物を与えないようにしてしまうことです。

 

したがって、砂糖などの糖質は減らしても、食物繊維やオリゴ糖は腸内環境の改善と腸内細菌の健康のためにしっかりと摂らなければならないのです。

糖質制限は大切ですが食物繊維やオリゴ糖は腸内細菌の健康

糖質制限は大切ですが、食物繊維やオリゴ糖は腸内環境と腸内細菌のためにきちんと摂らなければなりません。

糖質制限はゆるやかに

また、一般的な「糖質制限」についてですが、普段の食生活のなかで糖質制限を始めようとして突然炭水化物の量を極端に減らすと、体調を崩す原因になりやすいと言われています。

そのため、砂糖だけではなくご飯やパンに関係した「糖質制限」を始める際は、自分のからだの調子と相談しながら、ストレスにならないようにゆるやかに行うことが大切になってくると考えられます。

 

たとえば北里研究所病院糖尿病センター長である山田悟氏は、『糖質制限の真実』のなかで「ロカボ」と呼ばれるゆるやかな糖質制限を提唱しています。

 

 この「ロカボ」という言葉には、普通の「糖質制限」や「ローカーボ」には含まれない、もう一つの考え方を付け加えています。それは〝緩やかな〟糖質制限であるということです。

 糖質を1食20~40グラム、それとは別に1日10グラムまでのスイーツ、間食を食べて1日の糖質摂取量をトータル70~130グラムにしましょう、というのが「ロカボ」の定義です。(山田悟『糖質制限の真実』  p116~117

 

 普通の糖質制限と違うのは、下限を切ることによって、ケトン体が出てくるような極端な低糖質状態になることを避けているということです。これによって、ケトン体分泌に伴う血管内皮細胞の障害などを除外できます。

 また、極端な糖質制限は食事の幅が非常に狭まりますが、この〝緩やかな〟糖質制限ロカボの定義に従えば、食べられるものの幅はぐんと広がるのです。(山田悟『糖質制限の真実』p117

 

糖質制限の真実

山田悟『糖質制限の真実』幻冬舎新書

 

以上、ここまで砂糖をやめる糖質制限がうつの症状緩和と改善のために大切な理由について述べてきました。

 

冒頭でも書きましたが、私はこの記事を通して「砂糖」や「糖質」の摂り過ぎがうつの症状やうつ病の根本原因であると言いたいわけではありません。

しかし、普段「砂糖」や果糖ブドウ糖液糖をはじめとした糖質を摂り過ぎであり、糖質制限に関心があるという方は、少しずつ自分の出来る範囲でゆるやかな糖質制限を行ってみることをおすすめします。

 

また仕事は日中に行っているため、夜はからだをあまり動かさない方は、夕食は糖質をなるべく控えたり、夜食に糖質が多い食品を食べるのをやめたりするなどの工夫も、ゆるやかな糖質制限のためには必要になってきます。

さらに、先程も述べましたが、うつの症状をやわらげていくためには、腸と脳は神経系でつながっているため、糖質制限ばかりを行うのではなく、腸内環境に気をつけることも大切になってきます。

そのほか、ビタミンB群ビタミンCミネラルアミノ酸等の栄養素もしっかりと摂ることも、うつを改善していくためには必要です。

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もし糖質制限と腸内環境の改善を同時に行えるサプリメントを探しているのであれば、糖質を分解する生酵素と、腸内環境を整えるのに効果的な生酵母と生麹、食物繊維などが含まれている「MetaBioメタバイオ 生酵母・生酵素・生麹」がオススメです。

なぜなら「MetaBioメタバイオ 生酵母・生酵素・生麹」に含まれている非加熱の生酵素や麹は、糖質の消化と分解を助けてくれますし、酵母には糖質を炭酸ガスとアルコールに分解する発酵パワーがあるからです。

 

また、酵母には腸内の善玉菌を増やし、腸内細菌のバランスを整える働きもあるとされています。

そのため、おなかカンパニーROTTSが販売している「MetaBioメタバイオ 生酵母・生酵素・生麹」は、糖質制限と腸内環境の改善を同時に行うサプリメントとしてイチオシです。

 

メタバイオで糖質制限

こちらがおなかカンパニーROTTSの「MetaBioメタバイオ 生酵母・生酵素・生麹」です。

メタバイオで糖質制限

「MetaBioメタバイオ 生酵母・生酵素・生麹」は糖質制限と腸内環境改善のサポートにオススメです。管理人もその効果を実感しています。

 

 

 

参考文献

野村総一郎うつ病をなおす』講談社

野村総一郎うつ病の真実』日本評論社

大野裕『「うつ」を治す』 PHP研究所

最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』永岡書店

最上悠『薬を使わずに「うつ」を治す本』 PHP研究所

生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』PHP研究所

生田哲『心の病は食事で治す』PHP研究所

生田哲『砂糖をやめればうつにならない』角川書店

溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』青春出版社

 

夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』光文社

山田悟『糖質制限の真実』 幻冬舎

江部康二『人類最強の「糖質制限」論』SBクリエイティブ

 

光岡知足『腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ』

藤田紘一郎『脳はバカ、腸はかしこい』 三五館

内藤裕二『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』 ダイヤモンド社

福田真嗣『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ

うつと腸脳相関の関係とは-『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』

当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。

 

今回は、昨年発売された『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』(ジャスティン・ソネンバーグ、エリカ・ソネンバーグ 著)のなかにある、腸内フローラとうつ病の関係に関する記述をご紹介したいと思います。

まず、腸と脳の関係について、『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』では以下のように書かれています。

 

 腸の神経系は第二の脳だとよく言われる。数億個にも上るニューロンが、胃腸を制御する腸神経系と脳のあいだをつないでいる。この大規模な通信網は、食道から肛門までの消化管全体に目を配っている。腸神経系はきわめて大規模で、中枢神経系からの入力がなくとも独立してはたらくとはいえ、両者はつねに情報を交換しあっている。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p172~173

 

 腸神経系のはたらきは、脳と中枢神経によって統制されている。中枢神経は、自律神経系(心拍数、呼吸、消化などを制御する不随意神経系)の交感神経と副交感神経を介して腸と連絡を取りあう。自律神経系の仕事は、食べ物の腸通過時間の調整、胃酸の分泌、腸の内壁を覆う粘膜の合成にある。視床下部‐下垂体‐副腎軸(HPA)は、脳が消化を助けるためにホルモンを使って腸と連絡を取りあうもう一つのメカニズムだ。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p173

 

腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方

 

では腸脳相関とうつの関係についてはどうでしょうか?

 

 脳腸軸に問題を抱えた人びとのために、有益な細菌が解決策になるかもしれないと考える人々もいる。サイコバイオティクスと呼ばれる種類のプロバイオティクス菌は、向精神性の化合物を腸から脳に送ることで精神症状を改善することを目論む。行動を正常にする化合物質をつくる細菌を腸に送ることで、より健全な脳腸間の連絡を復活することが可能になる。腸にプロバイオティクス菌を与えると、ストレスやうつの動物モデルでは行動が改善するという証拠が次々に出てきている。ヒトを対象にした予備実験でも、慢性疲労症候群過敏性腸症候群の症状をプロバイオティクスで緩和できることがわかった。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p189

 

健康な参加者の場合も、三〇日にわたって毎日二種のプロバイオティクス菌のカクテルを摂取すると、不安感やうつが軽減した。このように楽観できそうな理由はあるのだが、これらはあくまで予備実験であって、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、気分障害(うつや重い不安障害)などの疾患の治療にプロバイオティクス菌をどう取り入れるかは、プラセボを飲む対照群を使った実験で決めるべきだろう。治療は個人化の必要があるかもしれない。しかし、こうした実験が思い起こさせてくれるのは、私たちの体内にいる微生物が脳と腸双方に影響を与える病気にかかわるということだ。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p189

 

もちろんこの記述から、ただ単にプロバイオティクス(有用菌が含まれた食品)を摂ることで、腸内フローラのバランスを整えれば、ただちにうつの症状が緩和されたり、うつ病が治ったりすると断言できるわけではありません。

しかし、腸内細菌や私たちの体内に生息する微生物が、わたしたちの心の状態や気分に影響を与えているのは確かであるように思われるため、普段から腸内環境を整える習慣をもつことは、うつの症状をやわらげていくために大切であると考えられます。

 

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腸内フローラのバランスと日和見思考がうつ病の予防になる理由

当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善糖質制限)で治すための方法について書いています。

今回は「腸内フローラのバランスを整えることがうつ病の予防になる理由」についてです。

私たちの腸内には100種類・100兆個以上もの腸内細菌が生息していますが、一般的に腸内細菌は善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分類されています。

そして、この善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスは2:1:7が理想だとされています。

この理想的な腸内細菌のバランスは一体何を示唆しているのでしょうか? 

実はその答えは、腸内の悪玉菌が増え過ぎるのは、便秘の原因になったり、体調不良の原因になったりして良くないけれど、かといってむやみに善玉菌ばかりを増やしすぎても、腸内フローラの調和が保たれなくなるため、からだのなかで様々な問題が生じてくる、ということなのです。

たとえば、腸内細菌学のパイオニアである東京大学名誉教授の光岡知足氏は、この腸内細菌のバランスについて、「共生の哲学」として以下のように述べています。

 

 人間社会に照らし合わせればわかりますが、すべての人が熱心に働いているような組織というのはどこか窮屈で、気詰まりがしています。ヒトも生物の一員ですから、なかには怠け者もいますが、そうした人が排除されてしまうような環境はけっして健康的とは言えないでしょう。

 学校で言えば、優秀な人ばかりではなく、落ちこぼれだって必ずいます。テストの出来がいい・悪いだけで、一人ひとりの個性が蔑ろにされてしまうのであれば、それは健全な教育とは言えません。

 どの国、どの時代であっても、悪いことをする人は必ず存在しますが、善いことをする人の割合が一定以上の割合で存在していれば、そうした悪も自然と抑え込まれ、社会の調和は保たれるでしょう。

 すべてを変える必要はないのです。腸内細菌で言えば、ヒトの健康のカギを握るのはビフィズス菌ですから、ビフィズス菌が働きやすい環境を整えていくことを常に考えるようにすれば、悪玉菌の増殖は抑えられ、大多数の日和見菌が悪になびくことがなくなっていきます。

 そう、わずか2割が変わるだけで腸内フローラのバランスは回復し、私たちは心身の健康を確保することができるのです。(光岡知足『腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ』p178~179)

 

腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ

 

光岡知足氏がここで述べようとしているのは、腸内フローラの調和を保つためには、「善玉菌=善」「悪玉菌=悪」と決めつけて、悪玉菌だけを排除しようとするのではなく、善玉菌が2割を占めるように、腸内細菌のバランスを整えていくことが大切なのだということです。

そのバランスとは先程も述べたように、「2:1:7」です。

うつをやわらげるために大切なのは日和見菌と日和見思考

ところで、前回の記事では、「心の健康と腸内フローラ・腸内細菌の関係」について述べましたが、そのなかでキセイチュウ博士である藤田紘一郎氏の「腸思考法」を紹介しました。その腸思考法とは以下の通りです。

  1. 固定観念を崩し、逆転の発想をつくる
  2. アサーティブな会話を心がける
  3. 失敗したときでもしなやかな考え方を
  4. 習慣に囚われない
  5. 食事は楽しい環境が大切
  6. 腸が嫌がる食品摂取をやめる
  7. キタナイものにも意味がある
  8. 他人に振り回されない
  9. 世界の中心から離れること
  10. 日和見だっていいじゃないか(藤田紘一郎『遺伝子も腸の言いなり』より

 

この藤田紘一郎氏の腸思考法で特に大切なのは10番目の「日和見だっていいじゃないか」です。

藤田紘一郎氏は『遺伝子も腸の言いなり』のなかで、「日和見に生きる。「こうあるべき」と堅苦しく考えず、そのときそのときの流れにまかせて肩の力を抜いたほうが楽に生きられます」と述べています。

また、腸内フローラのバランスを考える上で重要なカギを握っているのは、腸内環境の状態によって善玉菌にも悪玉菌にもなびく「日和見」であるとしています。

 

 欲のない善人だけでは人間の集団生活は成り立ちません。そしてもちろん、悪人だけでも成り立たないのです。重要なのは「日和見をする人の存在」です。

 だいたい、完全で絶対的な「善」や「悪」はこの世に存在しないのです。社会の状況に応じて善や悪の概念は変化していくものです。それを知っているのが「日和見をする人」なのです。

 私はこの日和見菌のように生きたいと思っています。完璧を目指して苦しむよりも、自分が「日和見」であることをつねに自覚しながら、「日和見」的な生き方を是とするほうが楽に生きられるからです。(藤田紘一郎『遺伝子も腸の言いなり』p206

 

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人生の物事に対して、常に完璧や100%を求めてしまったり、「善」か「悪」か、「白」か「黒」かで線引きしたりすると、固定観念に囚われた心は窮屈になり、苦しくなっていくと思います。

それよりも、うつの症状をやわらげ、少しでも心をラクにしてあげるためには、何でも頭で決めつけず、どっちつかずの「日和見菌」のように、ただぼんやりと空を眺めたりして、深い呼吸を心がけたりして、「いま」の気持ちを宙づりにしてみることが大切になってくるように思います。

 

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