うつと脳の炎症の関係性とは?
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回はうつの症状と脳の炎症がどのように関係してくるのかについて書いてみたいと思います。
うつの症状が起こってくる原因としては、一般的に職場や学校などにおける心理社会的ストレスが挙げられることが多いですが、それ以外に、脳に起きている「炎症」を疑ってみることも、うつの症状をやわらげていくためには、大切になってくると思われます。
では、「炎症」とはそもそも何でしょうか?
「炎症」とは、生体が傷害を受けた際に起こる反応のことで、簡単に言えば、体内で起きる火事のようなものです。その炎症とはからだにとっては異常事態であって、炎症が起きた体の部位は、腫れや痛み、発熱などが起こります。そしてそのからだで起きた炎症に対して、火消し役として対処するのは私たちの体内に備わっている免疫システムです。
炎症には急性炎症と慢性炎症とがあります。急性炎症は、病原物質を排除して組織を元の状態に回復させる復旧型防御システムです。慢性炎症は組織の改変に伴うもので、適応型防御システムと考えられています。うまく適応できなければ組織や臓器の機能が失われ、生物固体はこの世から退場させられることになります。(金子義保『炎症は万病の元 生活習慣病の真実、医療の現実』p62)
そして、この炎症とアルツハイマー病をはじめとした脳の疾患の関係性を指摘しているのは、ベストセラー『「いつものパン」があなたを殺す』で有名な神経科医のデイヴィッド・パールマター氏です。
脳疾患の原因は多くの症例において、たいがいは食事だ。脳の不具合の発生と進行にはいくつかの因子がかかわっているものの、だいたいの場合、炭水化物を食べすぎたとか、健康的な脂肪をほとんど口にしなかったという過ちのせいだ。
この事実を理解するには、あらゆる神経系の病気の中でもっとも恐るべきもの、つまりアルツハイマー病を考えることだ。そしてアルツハイマー病を、食事だけが引き金となる糖尿病の一種という視点で見てみることだ。質の悪い食事をとっている肥満や糖尿病になり得ることは誰もがわかっている。果たして脳も同じように壊れてしまうのか。(デイヴィッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p43)
脳疾患も含めてすべての変性疾患を引き起こすのが「炎症」であることは、研究者たちにはかなり前から知られていた。そして研究者たちは、グルテン、さらに言えば高炭水化物の食事が脳に達する炎症反応の原因になっていることを見出しつつある。
ふだん、腸内ガス、膨満感、便秘、そして下痢などは比較的すぐに症状が現れるので、消化器系疾患や食物アレルギーには気づきやすい。ところが、脳はとくにわかりにくい器官だということだ。分子レベルではあなたが気づかないうちにずっと激しい攻撃に耐えているかもしれない。頭痛を治そうとしたり、明らかな神経系の問題に対処したりしないかぎり、脳で何が起こっているかはわからず、とうとう手遅れということになり得る。脳疾患に関して言えば、いったん認知症などの診断が下されると、そこからの方向転換は難しいのだ。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p53)
「脳の炎症」がパーキンソン病からさまざまな多発性硬化症、癲癇、自閉症、アルツハイマー病、うつ病にいたるまでのあらゆる病気とは、何ら関係がないと思ってしまいがちな理由の一つは、脳には体のほかの部分と違って、痛みを感じる受容体がないためだろう。つまり、脳の炎症を感じることができないのだ。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p60~61)
グルテンと糖質が脳の炎症を引き起こす
では、脳が炎症を起こしてしまう原因は何でしょうか? デイヴィッド・パールマター氏が『「いつものパン」があなたを殺す』のなかで主に挙げているのは、たんぱく質の一種であるグルテンと糖質です。
グルテンとは「膠」を意味するラテン語で、タンパク質の混合物だ。粘着性のある物質として作用し、クラッカーや焼き菓子、ピザ生地などのパン製品をつくるときに粉をまとめる。
(中略)
多くのアメリカ人は小麦からこのグルテンを消費している。しかし、グルテンはライ麦、大麦、スペルト小麦、カムット小麦、ブルグア小麦などのさまざまな穀物にも含まれる。
(中略)どんなタンパク質でもアレルギーを引き起こすことがあるように、グルテンもアレルギー反応を生む可能性がある。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』 p78~79』)
また、デイヴィッド・パールマター氏は「グルテン過敏症」について以下のように述べています。
さまざまな苦痛の種を抱えて私のところにやってくる患者には、共通する特徴がある。
グルテン過敏症だ。
つまり、グルテンは現代における「毒物」であり、その研究のために脳の不調や疾患について幅広い状況に注目して調べ直さなければならない。その共通点がわかれば、たった一つの処方箋、つまり食事からグルテンを除くことによって、数々の病気の治療が可能になる。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』 p76~77』)
あなたは、セリアック病をわずらう人と同じようにグルテンに過敏ではないかもしれないが、神経学的観点から考えると、私たちはみな、グルテンに過敏であろうことがよくわかる。
神経系や脳という人目に触れない奥深い領域で起きているので、多くの人はただそれに気づかないだけだ。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p94)思い出してほしいのは、実際にあらゆる不調や疾患の核心にあるのは「炎症」だということだ。炎症反応を引き起こすものを体内に取り入れると、さまざまな健康上のリスクにさらされる。これは頭痛や頭がモヤモヤするなどの慢性的な深いからうつ病やアルツハイマー病のような深刻な病気にいたるまでを指す。
さらにいまや、グルテン過敏症と、何千年にもわたって医者たちも理解不能だった脳疾患(統合失調症、癲癇、双極性障害、うつ病、さらに最近の自閉症やADHDなど)との結びつきは証明されている。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p94)
さらに、氏は「炭水化物は、たとえグルテンを含まないものであっても、過剰に摂取すると、グルテンたっぷりの食事と同じくらいダメージを受けてしまう」と述べ、「炭水化物」の摂り過ぎも問題視しており、けっして「グルテン」だけが悪役ではないとしています。
そして、普段の食事を変化させることが、心の健康を取り戻す可能性につながるということを、『「いつものパン」があなたを殺す』のなかではっきりと示しています。
私は、飲食物からグルテンを一切摂らず、炭水化物の代わりに脂肪を摂ることで生活や健康状態を一変させた人たちの研究もしている。
このたった一つの食事の変化によって、うつ病が改善し、慢性疲労が回復し、二型糖尿病が快方に向かい、強迫的な行動に出なくなり、頭のモヤモヤから双極性障害(躁うつ病)にいたるまで多くの症状が治癒するのを目の当たりにしてきた。(デイヴィッド・パールマター『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p110)
では具体的に食事をどのように変えていけば良いのかといえば、やはり大切になってくるのは、「糖質制限」と「腸内フローラの改善」です。
脳の炎症を抑えるのに大切なDHA
さらに「油の摂り方」としてデイビッド・パールマター氏は「DHA」の重要性を指摘しています。
人間の脳はその重さの三分の二以上が脂肪であり、そのうちの四分の一 がDHAである。そしてこのDHAは抗炎症作用を持っていて、体に負担がかかるような食事をとると、体を守るために戦士のように戦ってくれる。たとえば、 グルテンに反応して起こる腸の炎症を抑えたり、糖質(とくにはちみつや果物に含まれる果糖)たっぷりの食事による悪影響を防いだり。さらに、炭水化物を摂りすぎて脳の代謝が低下するのを防いだりする。(デイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』 p252~253)
ちなみに私自身は、このデイビッド・パールマター氏の『「いつものパン」があなたを殺す』や『「腸の力」であなたは変わる』といった著作から少なからぬ影響を受けました。
そして氏の著作を読んで感じたことは、うつの症状を少しでもやわらげていくためには、これまで述べてきた「脳」に起きている「炎症」をはじめとして、日頃の食事が脳や心に与える影響についても、ひとつの視点として考えていかなければならないということです。
もちろん食事だけではなくストレスなどの心理的な側面によっても炎症は起こります。たとえばアトピーの方がストレスのせいで皮膚にかゆみを感じるのはその一例です。
また、日本では精神科医の最上悠氏が『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』のなかで、脳と炎症の関係について述べています。
カカオとココアがうつとストレスをやわらげるのに効果的な理由
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回はカカオとココアがうつとストレスをやわらげるのに効果的な理由について書いてみたいと思います。
カカオとココアは普段、職場や人間関係においてストレスを感じることが多く、気持ちもふさぎこみがちで、ついつい甘い物を食べてしまうという方におすすめです。
もちろん、カカオとココアが、つらいうつの症状を治すために高い効果を発揮してくれるわけではありませんが、一杯の温かいココアは、ストレスをやわらげ、心をほぐしてくれるのです。
カカオたっぷりのココアはうつとストレスをやわらげてくれます。
その理由は、ココアには、腸内フローラを改善するのに効果的な食物繊維をはじめとして、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、カリウムなどのミネラル、細胞の老化を防ぐ抗酸化作用があるポリフェノールなどが豊富に含まれているからです。
特にカカオの食物繊維は水溶性と不溶性の割合が、1:3であるため、他の食材と比べるとバランスよく含まれています。
ココアを一杯飲めば、一日の必要量が補えるわけではありませんが、それでも毎日一杯のココアを飲むことは、食物繊維の不足を解消するのに役立ってくれます。
また、カカオに含まれるカカオポリフェノールにはストレスをやわらげるリラックス効果があるといわれているほか、カカオ豆に含まれるテオブロミンという成分にも、血行を良くして緊張をやわらげる効果があるとされています。
特に過度のストレスを感じてしまうと、腸内の善玉菌が減少し、代わりに悪玉菌が増殖するとされていますので、極度のストレスや慢性的なストレスは腸内フローラの健康のためには大敵です。
さらにストレスを感じることで、砂糖が大量に入ったスイーツなどの甘い物を食べ過ぎてしまうことも、うつを改善していくためには要注意です。少しでもうつをやわらげるためには、砂糖をやめる糖質制限が大切になってくるのです。
しかし、普段からカカオをココアやチョコレートから摂るようにすることは、腸内フローラの改善やストレス対策として有効であると考えられます。
それに加えて、カカオにはセロトニンを作るために必要なアミノ酸である「トリプトファン」が豊富に含まれているといわれていますし、気分がとても良い時に体内で放出される「アナンダミド」を長続きさせるといいます。
おすすめは「ココア(カカオ)パウダー」
ですが、問題は市販のココアやチョコレートには、カカオ以外にも砂糖や人工甘味料、乳化剤などの食品添加物が多く使われていることや、製造過程において栄養素の多くが失われてしまっている可能性があることです。
カカオが体に良いとはいっても、カカオが目的で、砂糖や食品添加物を余計に摂り過ぎてしまうことは、腸内環境のために必ずしも良いとは言えません。
そこでオススメしたいのは、「カカオパウダー」や「ココアパウダー」の名前で販売されている100パーセントのカカオの粉末を、うまく利用することです。
このカカオ(ココア)パウダーをホットミルクやお湯と混ぜるだけで、不足しがちな食物繊維をはじめとして鉄分やカルシウムなどのミネラルを手軽に補うことができます。
しかしカカオ(ココア)パウダーには砂糖が入っておらず、お湯に溶かして飲んでも甘みはありません。
そのため、甘さを足すために自分で甘味料を足すことが必要になってくるのですが、そこで重宝するのは、血糖値を急激に上げる砂糖ではなく、オリゴ糖やココナッツシュガーなどの、ゆるやかに血糖値を上げる甘味料です。
特におすすめは、香ばしく砂糖とそれほど変わらない甘みがあるココナッツシュガーです(GI値が30程度)。
ココナッツシュガーにも鉄やマグネシウム、イノシトールなどが含まれています。
これで急激に血糖値を上げることなく、安心して甘くて美味しいココアを飲むことができます(もちろん、だからといって甘味料の入れすぎやココアの飲み過ぎには要注意です)。またお好みで牛乳も足してください。
そのほか、ココアにはカフェインが含まれているので、夜に飲むのではなく、朝や昼に飲んだほうが良いと思われます。
ちなみにカカオ(ココア)パウダーやココナッツシュガーは、オーガニックフードを販売する店や、オンラインショップで簡単に購入することが可能です。
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乳酸菌がうつの予防とストレス緩和に効果的な理由とは?
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回は乳酸菌がうつの予防とストレス緩和に効果的な理由についてです。
乳酸菌は腸内フローラのバランスを改善したり、腸内環境を整えたりするために、必要不可欠な存在ですが、乳酸菌を摂るようにすることと、うつの症状をやわらげたり、うつを防いだりすることとは、どのような関係があるのでしょうか?
(腸内フローラの改善とうつの症状の緩和との関係性については、以下の記事をご覧ください。)
まず、乳酸菌がうつの症状をやわらげたり、うつを防いだりすることに関して注目したいのは、乳酸菌のストレスを緩和する効果です。
過度のストレスを感じると、腸内の善玉菌が減少し、代わりに悪玉菌が増殖することはよく知られていますが、最近の研究では、乳酸菌がストレスに直接的に関わっていることが分かってきたとされているのです。
たとえば、ヨーグルトの摂取によりストレス情報の伝達を抑制されたり、一部の乳酸菌を摂ることで、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)が抑制されたりしたそうです。
また、これはマウス研究ですが、無菌マウスは通常の腸内細菌をもつマウスよりも、過剰なストレス反応を示すそうです(九州大学大学院医学研究員の須藤信行教授による研究)。
乳酸菌がストレスを低減するために働いてくれる
ところが無菌マウスに腸内細菌を植えつけると、無菌マウスのストレス反応は正常化に向かったようです。
もちろん、乳酸菌をヨーグルトやサプリメントからたくさん摂るようにすれば、ただちにうつの症状が緩和されるといったような短絡的な話にはならないと思います。
しかしこのような研究は、乳酸菌がストレスを低減するために働いてくれる可能性を示しているように思います。
とくにうつの症状が重くのしかかってくることには、多くの場合、学校や職場環境による心理社会的ストレスが主に関係してくると考えられるため、乳酸菌を摂るようにすることで、腸内の善玉菌を増やすことは、うつの症状を少しでもやわらげるために貢献してくれるのではないかと個人的には感じます。
そのほか、腸内の乳酸菌(善玉菌)が増えれば、腸管のバリア機能が高まり、有害な化学物質や細菌などが、体内に侵入をするのが防がれるというメリットもあります。
この腸管のバリア機能を高めるということも、うつ病をはじめとした心の病を防ぐためには大切になってくるように思います。
また、以前の記事でも紹介しましたが、『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』に以下のような記述があります。
健康な参加者の場合も、三〇日にわたって毎日二種のプロバイオティクス菌のカクテルを摂取すると、不安感やうつが軽減した。このように楽観できそうな理由はあるのだが、これらはあくまで予備実験であって、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、気分障害(うつや重い不安障害)などの疾患の治療にプロバイオティクス菌をどう取り入れるかは、プラセボを飲む対照群を使った実験で決めるべきだろう。治療は個人化の必要があるかもしれない。しかし、こうした実験が思い起こさせてくれるのは、私たちの体内にいる微生物が脳と腸双方に影響を与える病気にかかわるということだ。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p189)
腸内の乳酸菌の増やしてストレス緩和
ところで、食品から乳酸菌を摂ったとしても、成人になる頃にはすでに多種多様な腸内細菌が腸に定着しているため、ほとんど腸に居着くことが出来ず、体外に排出されてしまいます。
しかし、生きた乳酸菌を摂ると、数日の間は、乳酸を腸内で生み出して腸内の環境を正常な酸性の保ってくれるとされています。
また胃酸によって死菌になったとしても、善玉菌のエサになるといいます。
そのため、食品から摂った乳酸菌がそのまま腸内で活躍し続けるというわけではありませんが、日頃から乳酸菌を多く摂るようにすることは、結果的に腸内細菌の集まりである腸内フローラのバランスを整えることにつながるのです。
乳酸菌についての詳しい情報は以下のページをごらんください。
また、一度に様々な種類の乳酸菌をたくさん摂れるサプリメントをお探しの方は、1粒に500億個16種類の乳酸菌が含まれている乳酸菌革命 がオススメです。
トランス脂肪酸がからだと心の健康に対して悪い理由
当ブログではうつ病予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
前回はうつの予防のための正しい油の摂り方について書きましたが、今回はトランス脂肪酸が心の健康に悪い理由について述べていこうと思います。
一般的にトランス脂肪酸が体に悪いと言われていますが、その「トランス脂肪酸」とは水素結合が足りない不飽和脂肪酸に対して、人工的に水素添加することで出来たいびつな飽和脂肪酸のことです。
このトランス脂肪酸が問題なのは、人工的に水素添加することで出来上がっているため、プラスチックのように体内で分解されず、いつまでも体内に残ってしまうことだとされています。
そのため細胞の新陳代謝に悪い影響を及ぼしてしまうのです。
実際、脂肪を研究している科学者は、油に水素添加することを「プラスチック化する」と述べているようです。
例えば脳科学専門医の山嶋哲盛氏は、トランス脂肪酸が体に悪い理由に関して「細胞の働きが阻害されると、血管や脳に障害を起こしたり、さまざまな疾病の原因となります。トランス脂肪酸による代表的な健康被害が、血液中の悪玉コレステロールの増加や動脈硬化です」と述べています(山嶋哲盛『サラダ油をやめれば認知症にならない』)。
このトランス脂肪酸が体に悪い詳しい理由については以下の記事をご参照ください。
また、トランス脂肪酸の心の領域に対する悪影響に関しては、イギリス・オックスフォード大学のピュリ医師らによって、トランス脂肪酸が脳の活動に必要な酵素を破壊して、注意欠陥障害(ADD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)を引き起こす要因になることが指摘されているといいます。
このようにトランス脂肪酸は人のからだやこころに対して様々な悪影響を与えるとされており、なるべく摂らないようにするのが望ましいわけですが、日本では現在のところ、使用量の制限や表示の義務付けといった厳しい規制は食品業界に課されていません。
そのため、「マーガリン」や「ショートニング」といった原材料を使用している加工食品の多くにトランス脂肪酸が含まれているのが現状です。
もちろん、だからといって、スーパーマーケットやコンビニエンスストアに加工食品がありふれている現代社会において、トランス脂肪酸をまったく摂らないようにするのは非常に難しいと感じます。
しかし、末永くからだとこころの健康を維持していくためには、トランス脂肪酸の摂取を日頃から神経質にならない程度に気をつけてみることも、大切になってくると思われます。
うつの予防のために正しい油の摂り方とオメガ3(DHA・EPA・α‐リノレン酸)脂肪酸が大切な理由
当ブログではうつ病予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回はうつの予防のために、正しい油の摂り方とオメガ3(DHA・EPA・α‐リノレン酸)脂肪酸が大切な理由について書いていきたいと思います。
ではなぜうつの予防のために油(脂質)の摂り方が重要になってくるのでしょうか?
また心と体の健康のためにオメガ3(DHA・EPA・α‐リノレン酸)脂肪酸が必要になってくるのでしょうか?
近年、油(脂質・脂肪)は摂ると太りやすくなるというイメージのために、何かと敬遠されがちですが、正しい油の摂り方を知れば、肥満などの生活習慣病を予防すると同時に、からだとこころの健康を助けてくれます。
たとえば、脳の約6割は脂肪で出来ており、さらにその4割はDHAによって形成されていると言われているため、油の摂り方を知ることは、脳の神経細胞の健康を維持することにもつながっていきます。
それに加えて、脂質は脳の細胞膜の形成にも非常に大切な役割を果たしているため、正しく脂質を摂ることは、脳機能の改善にもつながってきます。
特にオメガ3(DHA・EPA・α‐リノレン酸)脂肪酸のうちのDHAは脳機能を考えるうえで大変重要になってきますので、うつの症状を少しでもやわらげるためには、きちんと摂るようにしなければなりません。
また、脂質は糖質の代わりの貯蔵率の良いエネルギー源になったり、脂溶性ビタミンの吸収を助けたりしています。
それ以外にも、リン脂質、糖脂質、コレステロールは生体膜の成分となって、細胞の働きを維持するという重要な役割を果たしています。
脂肪酸の種類
名称 | 脂肪酸の種類 | 含まれる主な食品 |
飽和脂肪酸 | 酪酸、ミリスチン酸、アラキジン酸など | バター、ココナッツオイル |
多価不飽和脂肪酸 オメガ3 |
α‐リノレン酸、DHA、EPA | 亜麻仁油、えごま油、シソ油、魚油など |
多価不飽和脂肪酸 オメガ6 |
リノール酸、アラキドン酸 | サラダ油、紅花油、ごま油、コーン油、肝油など |
一価不飽和脂肪酸 オメガ9 |
オレイン酸、パリミトレイン酸 | オリーブオイル、椿油など |
うつの予防のために正しい油の摂り方とは?
ではうつの症状を少しでもやわらげ、改善の方向へ向かわせるためには、日頃の食生活でどのような油を多く摂る必要があるのでしょうか?
ひとくちに脂肪酸といっても様々な種類がありますが、まず大切なのは体に必要な必須脂肪酸を摂ることです。なぜなら必須脂肪酸は体内で十分に合成することができないため、食事から補って行かなければならないのです。
その「必須脂肪酸」には「オメガ3」と「オメガ6」の2種類があります。
「オメガ3脂肪酸」とは、先程も述べましたが、DHA・EPA・α‐リノレン酸のことです。
このふたつは血液に対して相反する働きがあり、「オメガ3」は血液をサラサラに、「オメガ6」は血液を固まらせる方向へ向かわせる性質があります。
では、必須脂肪酸である「オメガ3」と「オメガ6」をただ漫然と摂っていけば良いのかといえば、必ずしもそうであるとは言い切れないのです。
なぜなら、現代社会においてはオメガ6のリノール酸を、自宅で使っているサラダ油や、ファーストフード、加工食品、お菓子などから大量に摂り過ぎている可能性があるからです。
またそれら以外にも、リノール酸はマヨネーズやドレッシングなどにも多く含まれているため、知らないうちに十分な量が体内に入ってきています。
オメガ6の脂肪酸にも細胞膜やホルモンをつくる働きがあることは確かですが、過剰摂取はアトピー性皮膚炎などアレルギー症状を引き起こしたりするとされています。
ちなみに脳の専門医の山嶋哲盛氏はリノール酸が含まれているサラダ油の摂り過ぎは、認知症発症のリスクを高めるとしており、脳の健康のためには、リノール酸の過剰摂取は好ましくないと考えられます。(参考 山嶋哲盛『サラダ油をやめれば認知症にならない』)
うつの予防のために重要なのはオメガ3脂肪酸を多く摂ること
一方、(先程も少し触れましたが)オメガ6の働きに対して、相反する働きをするのが「オメガ3」なのです。
そのため、現代社会における体と心の健康のための油の摂り方とは、オメガ6(主にリノール酸)を減らし、替わりにオメガ3脂肪酸を多く摂る、ということになります。
ちなみにオメガ3脂肪酸がうつ病の改善に効果を発揮するという研究データを紹介している研究者もいます。(参考 奥山治美『オリーブオイル・サラダ油は今すぐやめなさい!』)
また、オメガ3脂肪酸のうちのDHAは、脳の細胞膜(リン脂質)の形成にも深く関与しているため、判断力や記憶力など、脳の認知機能の改善にも効果を発揮すると言われています。(参考 生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』)
つまり、うつを予防したり、心の健康を保ったりするためには、過剰摂取になりがちなオメガ6(リノール酸)に対し、バランスを取るようにして、オメガ3の必須脂肪酸も多くしていくことが大切なのです。
ちなみにオメガ3とオメガ6とのバランスについては、「1:2」や「1:1」が望ましいとされています。
オメガ3脂肪酸はイワシやサバなどの青魚に多く含まれていますが、なかなか普段の食事で青魚を食べることができないという方は、青魚の知的栄養素【DHA&EPA+サチャインチ】 などのサプリメントを利用することも手段のひとつです。
また、亜麻仁油やえごま油に含まれているα‐リノレン酸は、体内で1~2割がDHAやEPAに変換されます。
そのため、食卓に亜麻仁油やえごま油を並べ、オメガ3脂肪酸は一般的に熱に弱いとされているため、炒め物や揚げ物に使わず、サッとサラダや惣菜などにかけることは、オメガ3脂肪酸の慢性的な不足を解消するのをサポートしてくれます。
以上、うつの予防のために正しい油の摂り方とオメガ3(DHA・EPA・α‐リノレン酸)脂肪酸が大切な理由について述べてきましたが、もしオメガ3脂肪酸を日頃の食生活であまり摂っていないと感じたら、サラダ油などに含まれるオメガ6脂肪酸とバランスを取るようにして、少し多めにオメガ3脂肪酸を摂るようにしてみてください。
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そのほか、心の健康維持のためには、トランス脂肪酸の摂り過ぎも要注意です。
「自分」とは何かを腸内細菌から考える。
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回は「自分」とは何かを腸内細菌から考えてみたいと思います。
この「自分とは何か」という問題は、「心」とは何かという問題同様、非常に難しいのですが、実は私自身が、若い頃は気持ちがふさぎ込むことが多く、その過程において、「自分」や「私」とは何かという問いを自分の心のなかで発し続けてきました。
そして、哲学や宗教、心理学や精神医学などのたくさんの書物や人生経験のなかで分かってきたことのひとつは、「自分とは自分だけではなく、自分以外の集まりのことも含む」ということです。
このことについての説明を始めると、かなり長くなってしまううえ、難しい話になってしまうので、ここでは止めておきますが、代わりに藤田紘一郎氏の『腸内細菌が家出する日』に、まるで代弁してくれているような的確な文章が書かれていますので、引用したいと思います。
自分、自己、自我、アイデンティティ、パーソナリティ。これらは心身医療や心理学でよく使われている言葉ですが、「本当の自分」というものは、実際何をもって証明できるのでしょうか。
といっても、私は禅問答や哲学論を投げかけているわけではありません。きっとこの答えを求めようとすれば、論じる人の数だけ答えがあるくらい、果てしない解となることでしょう。
しかし逆に、「本当の自分というものはないのだ」という仏教の教えのような解は、生物科学から証明できるようになってきたのではないか、と私は思っています。
というのも、私が長く研究してきた「寄生虫」と「腸内細菌」のふるまいや、それらが私たちに及ぼす影響を観察することで、そのことを強く実感するようになってきたのです。
結論を言ってしまえば、「生きとし生けるものはすべて、別の生き物から多大な影響を受け、自己がつくられている」ということになります。(藤田紘一郎『腸内細菌が家出する日』p1~2)
私たちは腸内細菌によって生かされている
日頃の生活のなかで腸内細菌の存在は見えないため、腸内細菌が私たちの「こころ」に影響を与えているということは、なかなか信じられないかもしれませんし、また、普段、「私」というものを疑ってみたことがない方ほど、私たちは腸内細菌によって生かされているという視点はすぐに納得できないかもしれません。
もちろん、私はこの記事で<私>とは腸内細菌に操られている存在だ、という極端なことを言いたいわけではありません。
ただ、藤田紘一郎氏が「生きとし生けるものはすべて、別の生き物から多大な影響を受け、自己がつくられている」と述べているように、自分の存在が、腸内細菌をはじめとした様々な存在に支えられているという視点をもってみることで、世界の見方が変わり、わたしたちが住む世界の姿が少し変わるかもしれないと思ったのです。
そして、そのことと、あまり無理をせず心が少しでもラクになることが、どこかでつながれば良いのではないかと感じます。
ちなみに『腸内細菌が家出する日』の前半部では、トキソプラズマをはじめとして、サナダムシやフクロムシ、エメラルドゴキブリバチといった寄生生物が宿主である生物の行動をコントロールしているという内容が語られています。
興味がある方は『腸内細菌が家出する日』をぜひ読んでみてください。
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食物繊維がうつの症状をやわらげていくために大切な理由
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
今回は食物繊維がうつの症状をやわらげていくために大切な理由についてです。
なぜ食物繊維がうつの症状を緩和するために重要な役割を果たすのかといえば、その理由は、食物繊維は腸内環境と、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善していくために必要不可欠だからです。
食物繊維は腸内細菌のエサになり、腸内細菌の数を増やす働きがありますし、また、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し、便秘を解消する働きもあります。
また食物繊維には水溶性と不溶性の2種類が存在します。
水溶性の食物繊維は腸内細菌のエサになりやすい性質があります。一方、不溶性の食物繊維は腸内環境をキレイに掃除したり、便通を促したりする性質があります。
食物繊維の主な効果
- 腸内細菌のエサになる
- 腸内環境をきれいにする
- 便秘を解消する
つまり、食物繊維といっても2種類があり、腸内環境や腸内フローラを改善していくためには、このふたつをバランスよく摂っていくことが必要になってきます。
(より詳しい食物繊維の情報については以下のページをご覧ください)。
そして、腸と脳は神経系でつながっているため、腸内環境が良くなればなるほど、脳や気持ちにも良い影響を与えることは十分考えられます。
ちなみに前々回の記事では、『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』に書かれている、腸と脳のつながりである「腸脳相関」と「うつ」の関係についてのくだりをご紹介しましたが、この『腸科学』では、食物繊維の重要性についても再三述べられています。
「食物繊維」という言葉は不明確なので、ヒトが体内に取りこむ食物成分のうちマイクロバイオータの食べ物になるものを、私たち二人は「マイクロバイオータが食べる炭水化物」を意味するmicrobiota accessible carbohydrates(MAC)と呼ぶ。すでに述べたように、マックは果物や野菜、豆類、穀物などさまざまな食物にふくまれ、マイクロバイオータによって発酵される炭水化物のことである。食物や食物繊維サプリメントにふくまれる食物繊維には、マイクロバイオータのいる大腸まで到達せず発酵しないものもある。これらの発酵しない繊維質も便秘の改善にはとても効果があり、排泄物が水分を吸って嵩が増すので、良好な整腸作用が得られる。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157)
『腸科学』の著者であるソネンバーグ夫妻は、腸内マイクロバイオータ(腸内の微生物の集まり)が食べる食物繊維を含めた炭水化物のことを「マック」と呼んでいますが、本書のなかでは、この「マック」をたくさん食べるようにすることが、腸内マイクロバイオータの健康維持に役立つとしています。
「短鎖脂肪酸」を生み出すために必要な食物繊維
さらに食物繊維は腸内細菌が「短鎖脂肪酸」を生み出すのにも貢献します。
この短鎖脂肪酸とは、主に水溶性食物繊維を摂取すると、腸内細菌が「発酵」と呼ばれる現象を起こすことで作り出される飽和脂肪酸の一種のことです。
だがマイクロバイオータに食べ物を与えて短鎖脂肪酸をつくってもらうには、やはりマックを食べる必要がある。マックをたくさん食べれば食べるほど、腸内の発酵が盛んになり、より多くの短鎖脂肪酸がつくられる。マイクロバイオータにどのマックを与えるかによって、腸内で繁殖する微生物群、マイクロバイオータを構成する細菌種の数(細菌集団の多様性)、この細菌集団が果たす機能が変わってくる。(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157)
そして、この短鎖脂肪酸の生成は、「うつ」とも関係してくるようです。
このことに関して、医学博士の内藤裕二氏は以下のように述べています。
食物繊維は、腸内細菌の中でも有用菌といわれるフローラに利用され、短鎖脂肪酸が生成されることが注目されています。
脂肪酸とは、油脂を構成する成分の一つで、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしていますが、そのうち炭素の数が六個以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれ、たくさんの種類があります。その中では、酪酸、酢酸、プロピオン酸が特に重要と考えられていますが、実は、それぞれの短鎖脂肪酸が腸管内でどのような役割を果たしているかについては、よくわかっていません。
この短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸において食物繊維をエサとして腸内細菌が発酵することによって作り出されます。つまり、これまでヒトの健康増進に良いと考えられてきた水溶性食物繊維の機能の一部は、短鎖脂肪酸に関与していることが明らかになってきたわけです。(内藤裕二『消化管は泣いています』p190)
有用菌によって産生される短鎖脂肪酸の中でも、特に酪酸には、抗うつ作用や認知機能改善作用があるようで、盛んに研究されているようです。こういった基礎研究は、消化管環境を改善し、有用菌を増加させるライフスタイルが、ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すものであり、大変興味深い点です。(内藤裕二『消化管は泣いています』p179)
内藤裕二氏が『消化管は泣いています』のなかでこのように述べている点は、食物繊維をたくさん摂り、腸内細菌のバランスを整えることで、うつ病を予防したり、うつの症状をやわらげていくために、非常に興味深いと感じられます。
しかし、あくまで「ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すもの」であるので、「短鎖脂肪酸」がうつを治すための効果を発揮すると科学的に証明されたわけではありません。
ですが、普段の生活において、腸内フローラのバランスが整うような食物繊維がたっぷりの食事を摂るようにすることは、うつの症状を少しでもやわらげるためには有効であると思われます。
そのため、食物繊維が豊富な野菜や海藻類、雑穀類などを毎日の食事でたくさん摂るようにすることが望ましいですが、それが難しい方は、食物繊維のサプリメントを飲みものやみそ汁などに混ぜて摂るようにするのもオススメです。
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また、当ブログではうつの緩和のために、なるべく砂糖を減らす糖質制限も推奨していますが、糖質制限で気をつけなければならないのは、食物繊維は炭水化物の一種だということです。
糖質制限とはやみくもに炭水化物を減らすことではないため、糖質制限を行う際は、砂糖を減らすと同時に、食物繊維を増やすのが理想的なのだと考えられるのです。