慢性炎症がうつの原因の一つである理由-「脳の炎症」を防げばうつは治せる
当ブログではうつ病の予防と、うつの症状を食事と栄養(主に腸内フローラ・腸内環境改善と糖質制限)、運動と瞑想で治すための方法について書いています(あくまでうつの症状をやわらげるためのひとつの手段です)。
以前の記事で、うつの症状が脳の炎症や腸の炎症と関係しているということについて、神経科医のデイヴィッド・パールマター氏の著作を引用しながら書きましたが、今回は精神科医の最上悠氏の『「脳の炎症」を防げばうつは治せる』を取りあげながら、慢性炎症がうつの原因の一つである理由について述べていきたいと思います。
では慢性炎症について述べる前に、そもそも「炎症」とは何でしょうか?
「炎症」とは、生体が傷害を受けた際に起こる反応のことで、簡単に言えば、体内で起きる火事のようなものです。
その炎症とはからだにとっては異常事態であって、炎症が起きた体の部位は、腫れや痛み、発熱などが起こります。
そしてそのからだで起きた炎症に対して、火消し役として対処するのは私たちの体内に備わっている免疫システムですが、免疫システムがすみやかに対応しなければならない炎症は「急性炎症」と呼ばれています。
ところが、その「急性炎症」とは別に、だらだらと続いてしまう炎症があると、精神科医の最上悠氏は『「脳の炎症」を防げばうつは治せる』のなかで述べています。
慢性炎症は、ほとんどの場合、痛みなどを感じることがなく、外から見てわかるような症状もあまりありません。
しかし、専門家が顕微鏡で体の組織をていねいに見たり、特殊な血液検査を行ったりしていくと、かすかな炎症反応が確認されます。とくに、脳で起こるものは〝ミクロの慢性炎症〟とよばれ、かなり精密な検査を行っても発見しにくいといわれています。
そして、そのぐらい微弱なものだとしても、炎症がジリジリダラダラと続けば脳や体は確実に疲弊し、蝕まれます。洞窟にしたたる水滴が長い歳月をかけて硬い岩に穴を開けていくように、慢性炎症の蓄積は心身にさまざまなダメージをもたらすのです。
脳の慢性炎症は、心理ストレスがあるときに起こりやすいことがわかっています。(最上悠『「脳の炎症」を防げばうつは治せる』p57)
脳の慢性炎症が起こる理由
では、なぜ「脳の慢性炎症は、心理ストレスがあるときに起こりやすい」のでしょうか?
最上悠氏によれば、心理ストレスが与えられると、炎症を起こせと命令する炎症伝令物質が増加し、炎症を促進するのだといいます。しかし、そのブレーキ役として、ストレスホルモンや迷走神経が炎症を抑えようとするのですが、「それでも抑えきれないとき、ジリジリダラダラとした慢性炎症が起こる」のだそうです。
分かりやすくいえば、慢性的な心理ストレスが原因で炎症が長引いてしまうと、炎症の火消し役のストレスホルモンや迷走神経の働きが鈍くなってしまうということです。
また、最上悠氏は「慢性炎症がうつをよぶメカニズム」として以下を挙げています。
- 炎症伝令物質が、うつっぽい症状を引き起こす
- 炎症伝令物質が、脳内科学物質の働きを狂わせる
- ストレスホルモンが脳細胞を殺してしまう
- 脳細胞の〝生まれ変わり〟がスムーズにいかなくなる
- 慢性炎症によって、脳細胞の周辺の組織も死んでしまう
- グルタミン酸や活性酸素が、脳細胞を痛みつける
(最上悠『「脳の炎症」を防げばうつは治せる』p61)
そして、「脳の慢性炎症は、いくつものメカニズムが複雑に連動してうつを引き起こします」と述べています。
慢性炎症を改善するには?
では、脳と体の慢性炎症を改善するにはどうすれば良いのでしょうか?
最上悠氏は『「脳の炎症」を防げばうつは治せる』のなかで、
- 「脳や体で起きている慢性炎症を抑える」
- 「慢性炎症の原因となる心理ストレスを減らす」
ことが大切だとしています。
また、「慢性炎症を改善するための、〝抗炎症のライフスタイル〟」として、「食事」と「運動」というふたつの切り口を挙げています。
この「食事」と「運動」については、以前に書いた記事と内容が似ている部分が多いので割愛しますが、脳の炎症のことも含めて、もしその内容に関心がある方は、最上悠氏の『「脳の炎症」を防げばうつは治せる』をご自身で読まれることをおすすめします。
また本書では心のストレスを減らす「セルフ・ヘルプ」の方法の一つとして、「マインドフルネス」も紹介されています。
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